給湯器の故障で頻繁に見られるエラーの一つに点火不良のエラーがあります。これは「給湯器が点火しようと思っても、何らかの原因で点火できない」というエラー内容になります。
エラー番号はE110、E111、E112、E113という数種類の番号があり、状況や機種によって番号が変わるのが特徴です。そして本記事は以下のような症状について書かれています。
- 給湯器のリモコンにE110、E111、E112、E113のいずれかが表示されている
- 給湯器は動こうとしているみたいだけど、全然お湯が出ない
- 調子が良い時は使えるんだけど、調子が悪い時は全然だめ
- エラーが出るまで時間が掛かる
中には「動いたり動かなかったり…」と調子に左右されることもありますが、その一方で「何回やっても火が付かない(でも機械は動こうとしているような音がする)」というケースもあり、症状は実に様々です。
今回は給湯器の不具合の中でも点火不良のエラー(E110、E111、E112、E113)に注目して、症状や対処法について分かりやすく解説していきたいと思いますので、ぜひ最後までお付き合いください。
給湯器博士、今回もよろしくお願いします!
こちらこそよろしくお願いします!
給湯器の点火不良のエラーとは?
エラー番号(E110、E111、E112、E113)の違い
- E110:石油給湯器の点火不良
- E111:ガス給湯器の給湯回路の点火不良
- E112:ガス給湯器のふろ回路の点火不良
- E113:ガス給湯器の暖房回路の点火不良
点火不良のエラーは「点火できない」か「点火はしているがそれを認識できない」という時に出るエラーです。エラーの番号に種類が設けられているのは、点火しないのがどのような機械のどの回路なのかによって分かれているからです。
基本的には「10X」という3桁の数字ですが、給湯専用機や一部の給湯器では下2桁で表示されます。末番の数字が何かによって、不具合の出ている回路が変わるというニュアンスで問題ありません。
ガス給湯器を使用していて給湯回路だけの問題(E111)なのであれば、お風呂は問題なく使用できるという可能性が十分に考えられます。ただし機種によっては給湯回路とふろ回路で使用する点火装置が同じ場合があり、その場合はどちらも使えないことが予想されるため注意してください。
点火不具合のエラー(E110、E111、E112、E113)が出る原因
- 燃料がきていない
- 点火プラグが劣化していて火花が飛ばない
- 燃焼制御装置が原因で点火を認識できていない
- 熱交換器からの水漏れが原因で点火できない
点火不良には幾つかの理由が考えられますが、ざっくり分けると上記の4点が非常に多いです。
特に「調子が良い時と悪い時がある」という場合は、給湯器内で経年劣化が進んでいて、故障の前兆としてエラーや数々の症状が出ている可能性があります。
以下では1つ1つの症状で「原因が何なのか、ユーザー様の方で対応できることはあるのか」についてご紹介しますので、給湯器メーカーに修理依頼をする前であれば参考にしてください。
点火不良のエラーで考えられる原因とユーザー側での対処方法
給湯器まで燃料がきていない(ガス給湯器の場合)
最初にチェックすべきはガスがちゃんと来ているか
一番単純な原因ですが「給湯器まで燃料(ガス)がきていない」という理由で、エラーを出してしまうことがあります。ガス給湯器の場合はあまり無いことですが、それでも絶対にないとは言い切れません。
コンセントプラグを差さない状態でテレビを付けようとするのと一緒で、ガス給湯器もガスが無ければ点火できないので、まずは「ガスメーターで変なランプが点滅していないかどうか」をチェックしてみてください。
あとは他にガスコンロ等のガス機器があるのであれば、そちらが正常に動作するのかを確認してみるのもおすすめです。「給湯器もガスコンロも動かない」となれば、燃料に原因がある可能性が高くなると言っていいでしょう。
ガスメーターの確認方法
ちなみにガスの場合は、ガスメーターの確認をするのが無難です。多くの場合ではメーター部分にタグが付いていて、ランプ表示の見方が簡単に説明されていると思います。
上記は一般型マイコンメーターの復帰方法ですが、同じタイプのガスメーターの場合は参考にしてください(ガス臭いという場合は安易にメーターを復旧させないように注意してください)。
エラーが出ている場合は、大体「赤色の点滅」など不穏な空気を感じる表示になっているはずです。どうしても分からなければ、ガス会社に電話で問い合わせてみるといいでしょう。
給湯器まで燃料がきていない(石油給湯器の場合)
石油給湯器の場合も、一番最初にチェックすべきは燃料不備です。冬場ならストーブなどが正常動作するのかどうかを確認するのが手っ取り早いですが、夏場やストーブを使用していない状況ならホームタンク内を目視で確認することをおすすめします。
古いホームタンクや新しいホームタンクだと、油量計が壊れていたり固かったりして「灯油残量がないのにも関わらず、外から見ると中身が入っているように見える」ということもあるので、できれば給油口を開けてペンライトか何かで中を照らし、ちゃんと灯油が入っていることを目視してください。
ホームタンクってあんな大きいやつを交換するのか?大体どれくらいのペースで交換するものなの?
20年以内に交換するというケースは珍しくありません。ちなみに400リッターの大きなサイズでも50,000円くらいで交換できると思います(タンク本体や作業状況によっても変わりますが)。
バーナーまで燃料がきていない
給湯器の中までは燃料がきているものの、点火しようとする時にガス電磁弁やオイル電磁弁が動作せずに燃料が出ないというケースです。この場合は電磁弁がエラーを出すこともあれば、単なる点火不良のエラーとして処理される可能性もあり、実際に診断してみないと分かりません。
電磁弁そのものの問題と言うケースもあれば、ノズル部分が詰まっていて燃料が出られないだけというケースもありますが、多くの場合でノズルだけの交換ではなく電磁弁ごとの交換になると思います。
点火プラグが劣化していて火花が飛ばない
給湯器では火花を飛ばしている部分に燃料を噴射して点火します。この時、燃料が噴射されなければ火が付かないのと一緒で、火花が飛ばなくても点火できません。
点火プラグは燃えカス成分などがこびりつくことで、火花が正しい方向に飛ばなくなるということが多いので、年数が経っている給湯器はこの可能性が高くなってくると言えるでしょう。
あとは点火プラグに対して電圧をかけている「イグナイタ」と呼ばれる部品があるのですが、これが悪いせいで火花が飛ばないというケースも考えられます。
経年劣化で多く見られるケースの一つに「雨の日になると調子が悪い」という症状もあります。その時も給湯器内では点火プラグに火花が飛んでいないことが多いです。
燃焼制御装置が原因で点火を認識できていない
給湯器には、実際に火が付いたかどうかを認識する部品があります。これを燃焼制御装置というのですが、点火プラグでパチパチと火花を飛ばしてちゃんと火が付いたら、燃焼制御装置から点火プラグに「もう火が付いたからOKだよ」という命令がいき、もう点火プラグは動作しません。
ガスコンロで火を付けようとした時に、最初はパチパチ鳴るけど火が付いた後はもうパチパチ鳴らないのと一緒で、この認識が出来ていなければずっとパチパチ音を鳴らしながら、いずれ点火不良のエラーを出します。
最も多いのは燃焼制御装置に火が当たる部分の近くに燃えカス成分が溜まっていて、燃焼制御装置の近くだけ火が出ていないというケースです。他ではしっかりと火が付いているのに、肝心な部分だけ火が付けていないせいで燃焼制御装置が点火を認識できないということは、古い給湯器でよく見られます。
熱交換器からの水漏れが原因で点火できない
熱交換器から水漏れをしている場合、初期状態の微量漏れでは「給湯器が燃焼すると漏れた水が乾いてしまう」ということが起こるので、外から見ても水漏れだと気付けないケースがあります。
この状況から少し進むと「湿気で火が付きにくくなるものの、給湯器本体を外から見ても水漏れに気付かない」というケースも出てくるでしょう。もう少し進むと「給湯機本体の底部から水がポタポタ漏れてくる」という症状になります。ここで発見できるかどうかが重要です。
水漏れだと放置している時間が長ければ長いほど、二次被害や三次被害になって大きな故障に繋がってしまうので、一刻も早い修理をおすすめします。外置きの給湯器であれば、実際に給湯器を見に行った方が良いです。
E110、E111、E112、E113を修理する際の内容と費用
点火不良エラーの点検内容
- ステップ1燃料の確認
燃料は来ているか、その燃料は正常かどうかを確認する。
- ステップ2水漏れの有無
水漏れ等がないかどうかを確認する。
- ステップ3点火動作の確認①
ガスメカ、電磁弁などが正常動作しているかどうかを確認する。
- ステップ4点火動作の確認②
イグナイタは動作しているか、点火プラグから正常な位置に火花は飛んでいるかを確認する。
- ステップ5点火動作の確認③
熱交換器やバーナー部に詰まりは無いかどうかを確認する(詰まりがあるなら程度に応じて交換か掃除かを判断)。
まずは燃料が来ているかどうか、燃料は正常かどうかを確認します。兎にも角にもここが一番重要です。燃料の確認はガス給湯器の場合はガスコンロが動くかどうか、石油給湯器の場合はストーブが動くかどうかを見るのが手っ取り早いです。
この場合、配管内に正常な燃料が残っているケースがあります。例えばガスコンロの場合、配管内に残っているガスだけで5秒くらいは普通に動作できることが多いため、そこだけを見て「ガスは正常」という早合点をしないように注意してください。
IHだったり夏場だったりした場合は、実際に動作させた時に排気口から出る排ガスのニオイを確認することもあります。あとは機種によってはE111ならお風呂回路を動作させてみて、正常に動作するかを確認してみるのも一つです。
被害が軽いケース
- イグナイタ、点火プラグ:2,000円以下
- 作業料:部品1箇所につき3,000円~10,000円
- 出張料
イグナイタや点火プラグなどのちょっとした部品の交換で済む場合、あるいは熱交換器やバーナーが少しだけ詰まっていて軽い掃除で直るという場合は、10,000円以内で直せるケースも多いです。
点火プラグの交換と簡単なオーバーホールをしても、20,000円以内に収まることが多いんじゃないかと思います。ただし掃除だけで済ませて部品そのものを交換しないという場合は、どうしても詰まりやすいままであることが多いので注意しましょう。
例えば使用開始から6年で詰まってしまって掃除をした場合、今度は6年も持たずに詰まってしまうことが予想されます。
点火プラグって部品交換が必要なの?掃除とか磨くだけで済むなら、そっちの方が修理料金が安くなりそうだし、助かるんだけど…。
点火プラグにエラーの原因がある場合は、基本的には交換します。一方で別件で点火プラグを点検した時に劣化が気になったという場合なら、掃除や調整で済ませることも多いです。でも点火プラグは安い部品なので、調整と交換で大きく料金が変わる事はありません。
あんまり料金が変わらないなら新しいのにしてくれ。
症状が重いケース(ガス給湯器)
- 部品代:50,000円以下
- 作業料:20,000円以下
- 出張料
ガス給湯器の症状が重いパターンは、給湯側の熱交換器とバーナーが燃えカス詰まりを引き起こしていて、掃除よりも部品交換した方が良いと判断されるケースです。
その中でも「このままだと風呂側(あるいは暖房側)も同じようになってしまうから、同時に交換した方が無難」と判断されてしまうと、修理費用が非常に高くなってしまいます。
あとは熱交換器から水漏れしていて、そのせいで点火できないという場合だと熱交換器やバーナー以外にも二次被害、三次被害と出てしまう可能性があるので、この場合は青天井で修理費用が嵩んでしまう可能性も否定できません。
症状が重いケース(石油給湯器)
- 部品代:50,000円以上
- 作業料:20,000円以下
- 出張料
石油給湯器の場合だと水漏れも最悪なケースの一つですが、もう一つ「オイル通路部に水が通ってしまう」というケースがあります。これはホームタンクが古い状態で、定期的に水抜きなどのメンテナンスを行っていなかった場合に多いです。
ホームタンクは結露などが原因で徐々に水が溜まってしまうのですが、ある一定量の水が溜まってしまうと、石油給湯器や石油ストーブ側に流れていってしまいます。
こうなると本来であれば石油しか通らない部分に水が通ってしまい、点火不良などの原因となるので基本的には水が通った部分は全交換となるでしょう。
本記事のまとめ
- 燃料の確認をするだけで改善するケースが少なくない
- 点火不良のエラーは、給湯器の経年劣化でよく見られる代表的なエラー
- 使用開始から7年以上が経過していて高額修理になる場合、修理よりも買い替えがおすすめ
点火不良のエラーは非常に多いですが、割と原因はすぐに判明することが多いです。そして一定の割合で「燃料不備」が原因で修理依頼をしてくるというユーザー様がいらっしゃいます。
E110、E111、E112、E113はとにかく燃料の確認から行うようにしてください。そして燃料に問題が無ければ、修理依頼することをおすすめします。
あとは給湯器の寿命を示唆する前兆としても出やすいエラーなので、年数が経っている給湯器の場合は修理だけでなく、給湯器本体を交換することも視野に入れて修理依頼をするのがベストです。