冬になって暖房を使用する時期になると、給湯暖房機や暖房機がE043を出すことがあります。給湯暖房機だとシーズンを問わずにこのエラーを出すかもしれません。
このE043は「暖房水不足・循環液枯渇」のエラーで、暖房回路内の暖房水が一定量よりも少なくなっていることを意味しています。暖房水が不足しているだけであることが多いので、単純に暖房水を追加してあげることで動作する可能性が高いですが、それには幾つかの注意点があります。
このページではE043の応急処置の方法とそのリスクについて解説していきますので、ぜひ最後までお付き合いください。
給湯器博士、今回もよろしくお願いします!
こちらこそよろしくお願いします!
給湯暖房機、暖房ボイラーのE043の概要
暖房配管の密閉式と半密閉式
暖房配管には密閉式と半密閉式の2通りの配管方式があります。文字通り、配管が密閉されているかそうでないかの違いなのですが、まずはあなたのお家がどちらの施工方法なのかを知らなければなりません。
密閉式配管の場合は専用の工具が必要
密閉式の場合、ユーザー様自身で不凍液(暖房水)を追加するということは難しく、基本的には業者に依頼することになるでしょう。最終的に加圧することが必要なので、専用の工具も必要です。
ただし密閉式の場合であれば不凍液が蒸発したりすることが考えにくいため、「どこかで暖房水が漏れたりしていない限りは滅多にE043を出さない」という特徴があります。
密閉式の場合は、暖房ボイラー周辺に上記画像のようなゲージが取り付けられていることが多いです。
特に上記画像のようなゲージが使われている場合、基本的には暖房ボイラーの暖房水補充口に取り付けられていることが多いので「これが邪魔で自分で不凍液が補充できない」という場合は、密閉式と考えて間違いないでしょう。
また、暖房ボイラー付近に膨張タンクと呼ばれる、円形か楕円形のタンクがあるというケースも少なくありません。このタイプも密閉式の可能性がほとんどになります。
あとは「暖房端末にパネルヒーターを採用していてパネルが10枚以上ある」とか「1階と2階にパネルヒーターがある」という場合も密閉式の可能性が高いです。
密閉式の方が暖房水を循環させる力は強いので、絶対ではありませんが1階と2階に暖房端末があったり、暖房端末の数が多くなる場合は密閉式であることが多いです。
半密閉式の場合はユーザー側で不凍液補充が可能な場合が多い
半密閉式の場合は、ユーザー様自身で暖房水を補充、追加することが可能なことが多いです。これまでに暖房水を補充したことがあるという場合、あるいは温水コンセントがご自宅の中に幾つか存在するという場合は、半密閉式と考えて間違いないでしょう。
ちなみに温水コンセントとは、上記画像のような設備のことです。暖房端末にファンヒーターを採用しているご家庭では、ここにホースを差すことで暖房が機能するという環境になっていることも多いのではないかと思います。
これがお家の中にあるという場合は、半密閉式と考えて問題無いでしょう。不凍液の補充の仕方については後述しています。
給湯暖房機がE043を出すメカニズム
暖房ボイラーの中には、不凍液がちゃんと入っているかどうかを確認するための電極があります。この電極に不凍液が触れていれば問題ないのですが、もし触れているのが空気だとすればE043を出すという仕組みです。
つまり「暖房水が足りない可能性が高いものの、完全に足りないという状況でなければ水位が下がった時だけエラーを出したり、あるいはたまたま配管内の空気が邪魔をしてエラーが検出されることもある」と言えます。
それにもし不凍液が足りなかったとしても、電極は液体か空気かを判定しているだけなので、水を足してやるだけでエラーが復帰することが多いです。
水を足すだけで復帰するなら別に困ることは無さそうだけど…。
水をちょっと足しただけで復帰すれば問題ないのですが、もし配管内のどこかに漏れがあって、そこから暖房水が逃げて水位が減っていくという場合、いくら足しても追いつかないのでこの場合は注意が必要です。
中身の暖房水も薄まりそうだもんね。
E043を応急処置する際の注意点
自分で不凍液を補充したいという場合は、こちらの記事を参考にしてみてください。
▶暖房ボイラーの不凍液交換、補充は自分で出来る?|不凍液交換の方法
補充するのは不凍液が望ましい
前項では「水を補充しても復帰する可能性がある」と書きましたが、補充するのは不凍液が望ましいです。不凍液は「防腐性/不凍性」という2つの特徴を持っています。
暖房配管に入っているのが不凍液ではなく水だとしたら、暖房機が止まってしまうと配管内の水が凍り、配管が凍結破損に繋がってしまうかもしれません。また、不凍液なら配管を腐食させませんが、水は金属を腐食させます。
暖房ボイラー本体、暖房端末の内部から水漏れしてくる分にはまだマシで、もし床下の暖房配管から水漏れしてくることがあれば、その修理費用は莫大な額に膨れ上がってしまう可能性が出てくるでしょう。
ちょっとくらい水で薄める分には問題ありませんが、不凍液は経年劣化もしますし、全体の量によってもどれくらいまで薄められるかが大きく変わってくるので、できれば水を足すのではなく、不凍液を足すことをおすすめします。
そして不凍液にも数多くの種類があり、混ぜて使用することは禁止です。
どの不凍液を使用したかは施工業者でなければ分かりませんし、使用しているのがリンナイ製の暖房ボイラーだからと言って純正の不凍液が使われているとは限らないので、自分で補充する前に施工業者に「なんの不凍液を使用しているか」を確認することをおすすめします。
不凍液は混ぜることができません。成分同士でケンカしてしまう可能性があるため、必ず同じ物を使用しましょう。また、経年劣化が進むと色で判断するのも難しくなります。給湯器内に入っている不凍液が緑だからと言って、それが新品の時から緑だったとは限らないという点もご注意ください。
目の届く範囲で不凍液が漏れていないことを確認する
E043で単純に暖房水の水量が微妙に減っているだけなら、不足分の不凍液を追加してあげるだけでいいのですが、配管や機器内で水漏れをしている場合はE043の頻発に繋がります。
このような場合だといくら暖房水を追加したところで間に合わないので、補充前に目に見える範囲で結構なので、機械から水漏れしていないかどうかくらいは最低限確認することをおすすめします。
あとは「前回の補充から1年以内であるにもかかわらず2L以上の追加が必要だった場合」や「以前に不凍液を追加してから間もないのにE043が再発したという場合」は、どこからか漏れている可能性が高いです。経緯をしっかり説明したうえで、修理業者に点検してもらった方がいいかもしれません。
補充する際は「燃焼していない時、完全に循環液が冷めている時」にすること
暖房ボイラーが燃焼している時は、内部の暖房水が膨張している状態です。例え半密閉式とは言っても、そこに掛かっている圧力は非常に大きなものになるので、機器燃焼中や「さっきまで燃焼していた」という状態で不凍液を補充する時に、ラジエーターキャップを開けることは絶対に避けてください。
物凄い勢い(噴水くらい)で不凍液が飛び出し、火傷の危険性も出てきます。知識がある人ならいいのですが、そうでなければラジエーターキャップには触れず、リザーブタンク側に補充するのがおすすめです。
リザーブタンクは最小限の残量でOK
半密閉式の場合、機器内の暖房水が不足してもリザーブタンクに残量があれば、そこから補充して動作することができます。
ごくまれにリザーブタンクから機器内に不凍液を引っ張れなくなるという不具合もありますが、その場合は部品交換が必要になるかもしれません。
上記画像はノーリツ製の石油暖房機ですが、このようなカタチで本体の外装部からもリザーブタンクの内容量が確認できるようになっていると思います。
FULLの位置が真ん中あたりに刻まれているのは、リザーブタンクの役割は機器に不足分を供給することだけじゃなく、「暖房回路内で膨張してきた暖房水の逃げ道」だからです。
なんとなくで「FULLを超えて、8分目くらいまで入れておこう」とやってしまうと、「暖房水が膨張した時にリザーブタンクの水位が高くなって、せっかく補充した不凍液が溢れてしまう可能性がある」ので、リザーブタンクには最低限の暖房水しか入れないようにしましょう。
不凍液は数年に1度、総入れ替えが必要!
上の方で不凍液には「凍らない/配管を腐らせない」という2つの特徴があると書きましたが、水で薄めなくてもこの特性は徐々に失われていきます。
そのため、不凍液が不足する度に追加という行為を繰り返していたのでは、内部の不凍液の劣化が進んでしまって取り返しのつかないことになってしまうかもしれません。
そこで数年に一度、不凍液を全く新しいものに入れ替えるという作業をするようにしましょう。費用は決して安くありませんが、これを怠って暖房配管を腐食させてしまうよりはずっと良いですし、熱効率も上がって快適に使用できるようになるはずです。
具体的な年数は、大体3年~5年に1度のペースで入れ替えるのがおすすめです。交換費用はご自宅の暖房配管の規模にも大きく左右されるので、業者の人に確認してみてください。
最後に
E043は、もしかすると暖房系のエラーの中で1番多いエラーかも知れません。
メカニズムを理解していれば簡単に応急処置できるケースもありますが、やりすぎて大きな不具合に繋がるリスクも出てくるので注意しましょう。