給湯暖房機(給湯器と暖房機がセットになっている機械)等をお使いのユーザー様の中には「エラーは出ていないのに暖房端末が温かくならない」という悩みや不安を抱えることになるケースが少なくありません。
特に暖房熱源機と暖房端末のメーカーが違う場合、どっちが原因なのか分からなくて戸惑ってしまうこともあるのではないでしょうか。本記事は以下のような人の向けて書かれた記事です。
- 床暖が温かくならない(全体または一部のみ温かくならない)
- パネルが温かくならない(全体または一部のみ温かくならない)
- ファンコン、浴室乾燥機から風が出ない
- 暖房ボイラーと暖房端末のメーカーが違って、どこに修理依頼すればいいか分からない
これらの場合に「よくある故障事例、暖房端末が温まらない原因のまとめ」についてご紹介します。
設置状況や使用している暖房端末によって細部情報が異なるため、実際には「現場を見てみない事には、正確な故障診断はできない」という前提がありますが、基本的な故障事例として参考にしてみてください。
給湯器博士、今回もよろしくお願いします!
こちらこそよろしくお願いします!
暖房端末別の温まらない原因まとめ(エラーあり)
給湯暖房機、あるいは床暖房やパネルヒーターなどに使用している暖房専門機の場合は、多くのケースで給湯暖房機(あるいは暖房専用機)のリモコンが設置されていると思います。
暖房機が動かない場合は、基本的にはこのリモコンにエラー表示があることが多いです。まずは暖房端末や暖房熱源機にエラー表示がないかどうかを確認しましょう。
給湯機能も持っている暖房機を使用している場合に「給湯機能も使えない」という場合は、基本的には安全装置の故障などが考えられるのでまずはエラー表示を確認してください。
暖房ボイラーのリモコンにE043が表示される
暖房ボイラーはエラーを出すことで停止することがあります。特に「E043」は頻繁に見るエラーと言ってもいいでしょう。これなら不凍液の補充で復旧することがほとんどです。
E043は暖房回路を循環している不凍液が不足している時に出るエラーです。暖房シーズンの開始時期や、本格的に暖房を使い始める時期に表示されることが増えてきます。
単純に不凍液が足りていない時に表示されるエラーなので、ユーザー様の方で補充してもらうだけで復旧します。ただし補充の仕方にいくつかの注意事項があるため、詳しくは下の関連記事をご覧ください。
▶給湯暖房機のエラー043は暖房水不足|応急処置可能でも注意あり!
暖房ボイラーのリモコンにE643が表示される
E643は暖房水循環ポンプのエラーです。暖房ボイラーの経年劣化でよく見られるエラーの一つで、不凍液の交換などのメンテナンスを怠っていた際にも出ることがあります。
このエラーが表示されてしまうと暖房ボイラーで熱した不凍液を循環させることができないため、暖房端末も動作することができません。
▶給湯暖房機のE643は循環ポンプのエラー|ユーザーができる対策と修理の内容
暖房熱源機のリモコンが設置されていない場合
リモコンにエラーが無ければ本体を確認しよう
各家庭の設置状況によっては、暖房熱源機のリモコンが設置されていないケースも少なくありません。
例えば床暖房であれば、暖房ボイラーのリモコンとは別の床暖コントローラーが設置されていることが多く、浴室乾燥機も専用のリモコンが使われているケースが多いですね。暖房端末専用のリモコンが設置されている場合の多くは、熱源機のエラー表示はしないことがほとんどです。
この場合は暖房ボイラー本体を確認してみてください。機種によっては燃焼ランプがフロントカバーから確認できるようになっていて、暖房ボイラー本体がエラーを出している場合はここが点滅していることがあります。
燃焼ランプが点滅しているのが確認出来たら、暖房ボイラーのメーカーに連絡をして修理依頼をしてください。
なぜ熱源機のリモコンが設置されていないのか
暖房端末がルームヒーターやファンコンベクターのみという場合には、暖房端末の電源を入れれば自動的に熱源機の電源も入るという環境になっていることが多く、この場合は熱源機のリモコンが設置されていないことがあります。
基本的には暖房熱源機にもリモコンが必要なのですが、暖房熱源機のリモコンでやることと言えば「電源の入り切り、循環する不凍液の大まかな温度設定」です。端末によってはこれらが必要ないため、利用環境によっては「わざわざ暖房ボイラーのリモコンを購入する必要はない」と判断されています。
不凍液の温度が部屋の温度とはならないので、風が出るタイプの暖房端末では「熱源機のリモコンは無いほうが分かりやすいし使用しやすい」という側面があるのも事実です。
リモコンが2個あると「暖房機のと端末の両方の電源を入れなければならない」ということがあります。「だったら端末のリモコンだけでいいのでは?」という考えのもと、暖房機本体のリモコンは設置されていないことも珍しくありません。
床暖、パネルヒーターの全体または一部が温かくならない
- 循環する不凍液が温まっていない
- 循環する不凍液は温まっているが、それが正常に循環していない
- 「寝室のパネルは暖かいけどリビングのパネルは冷たい」など、箇所によって極端な差がある
- 子供部屋のパネルが「上半分は暖かいけど下半分は冷たい」など、同じパネルでも部分によって差がある
床暖やパネルヒーターが温まらないときは、主に上記のような原因と症状が考えられます。不凍液が温まらない場合は暖房ボイラーが燃焼していないことが多く、この場合は本体にエラーが出ていることが多いです。
また、床暖やパネルヒーターには室温を検知して流量を調整するという機能があるので、この室温を検知する場所に異常がないかどうかも確認してみてください。パネルヒーターの場合は流量調整するバルブで室温を検知していますが、ほこりの影響で正常に室温を測定できていないことがあります。
暖房回路の一部が閉鎖されている
厄介なのは「暖房機は燃焼していて不凍液も温められているのに、それが何らかの原因で上手く循環していない場合」です。この場合の多くはエラー表示がないのに床暖房(またはパネルヒーター)の全体または一部が温まらないという症状になります。
暖房配管の詰まりが原因になっているケースもあれば、暖房熱動弁(アクチュエータ)が開閉していないというケースも考えられるでしょう。もし一部の暖房熱動弁が動作していない場合、トイレのパネルは正常なんだけど寝室のパネルが温まらない(寝室の暖房熱動弁が悪い)ということが起こります。
暖房を使うときは「リビングの暖房は動かしたいけど寝室の暖房は動かなくていい」など、部屋によって使い分けたいということがほとんどだと思います。このとき「熱源機は通常通り動いて不凍液を温め、この不凍液を必要な場所にだけ流す」ということがほとんどです。
このシステムに問題があると、暖房ボイラーはエラーを出さないことが多いうえに不凍液が正常に循環しないということが起こります。
パネルヒーターの場合はバルブをチェック
パネルヒーターの場合は、基本的にパネルヒーターそのものにバルブが取り付けられていることが多く、これを熱動弁と考えて差し支えありません。
「見た目上はバルブを開けているんだけど内部では実は閉じている」という故障もあるので注意が必要です。この場合はバルブの根元が熱いかどうかで確認することができます。
- パネルヒーターのバルブ手前までは熱い→バルブに原因がある可能性が高い。
- パネルヒーターのバルブ手前も熱くない→そもそもこの回路まで循環していない。
バルブの手前まで熱い不凍液が来ているのに、その先が温まっていないのであればバルブで不凍液が遮断されている可能性が高いです。そもそもバルブの手前も温まっていないのであれば、暖房ボイラー本体や循環ポンプの故障が考えられます。
パネルヒーターの左右、または上下半分だけが冷たい
特定のパネルヒーターで「上半分(または左右半分)はちゃんと熱いのに、もう半分が冷たい」ということがあります。これはパネルヒーターの仕様上、温度調整の仕組みでそうなっていることが多いです。
例えばノーリツ製のパネルヒーターでは、以下のようにパネルヒーターの温度を調整しています。
- 室温が設定温度より高い→パネルが冷たい
- 室温が設定温度より低い→パネルが熱い
- 室温が設定温度と等しい→パネルが部分的に熱かったり冷たかったりする
もし特定のパネルヒーターで部分的に熱い・冷たいという症状が確認できる場合は、パネルヒーターの仕様上の可能性があるので一度取扱説明書をご確認ください。
「室温と設定温度が同じじゃないのにこの症状が出ている」という場合は、室温の把握が上手くいっていない可能性があるので、流量調整バルブにほこりが付着していないかどうかをチェックしてください。
▶パネルヒーターが冷たい時の原因と対処法|依頼前にチェックすべき点
パネルヒーターのバルブにほこりが詰まってたから掃除したけど、まだ部屋が寒いのに半分冷たいままなんだよなぁ。
パネルヒーターのバルブに搭載されている温度測定機能は完ぺきなものではないので、ばっちり調整できるというものではありません。ある程度、大目には見てあげてください。
ルームヒーター、ファンコンベクター、浴室乾燥機から風が出ない
- 循環する不凍液が温まっていない
- 循環する不凍液は温まっているが、それが正常に循環していない
- 暖房端末の故障
同じ端末を2台以上所有しているなら、全部で同じ症状かどうかを確認する
ルームヒーター、ファンコンベクター、浴室乾燥機など「暖房ボイラーで温めた不凍液を利用して、温風を出すタイプの暖房端末」を使用している場合、風が出ないという不具合が多いです。
冷たい風すら出ないというケースが多いわけですが、暖房端末の仕様上「流れ込んでくる不凍液の温度が一定上でなければファンが動作しない」というシステムになっていることが多いので、この場合は「暖房端末の電源を入れてもうんともすんとも言わない」というケースがほとんどだと思います。
この場合も当然ながら「全部のルームヒーターが動作しない=熱源機(ボイラー)の故障、一部のルームヒーターが動作しない=ファンコン本体の故障」である可能性が高いです。
暖房端末が1台しかない場合のチェック項目
ただし浴室乾燥機などは1台しかないことがほとんどだと思うので、このような場合は「機械そのものを触ってみて、温かい気配を感じるかどうか」をチェックしてみるのがおすすめです。くれぐれも火傷しないように配慮しながら確認してみてください。
「温かい不凍液が流れ込んでいないから動いていない」のか、それとも「温かい不凍液は流れ込んでいるけど風を送ることができない」のか。前者であれば熱源機の暖房ボイラー、後者であればシロッコファンの動作不良などの暖房端末の故障が考えられます。
ちなみに後述していますが、熱源機と端末機のメーカーが違う場合、間違った場所に修理依頼をしてしまうと出張料が余分に発生してしまう可能性があるので注意しましょう。
パネルヒーターのケースと大きく違うのは、暖房端末が精密機械の場合は暖房端末そのものの故障の可能性があるってことだね。
そうですね。床暖房やパネルヒーターは「温めた不凍液を流すか流さないか」というシンプルな構造ですが、正確な温度調整の機能を持っている場合は暖房端末自体の故障も考えなくてはなりません。
でも暖房端末が故障してるなら、エラーは出るんじゃないの?
エラーが出る場合が多いですが、一部給湯器の故障と一緒でエラーを出さない不具合も多数存在するので、一概には言えないですね。
暖房ボイラーと端末のメーカーが違う場合の対処法
原因がある箇所のメーカーを手配しないと二度手間になる
前項でも軽く紹介しましたが、結構多いクレーム事案になっているのでご紹介します。
この手の「暖房端末が動作しない」という故障において、割と多いトラブルの一つが「暖房ボイラーのメーカーと暖房端末のメーカーが違い、どこの業者に修理依頼するか」というものです。
例えば「暖房ボイラーがリンナイ製、浴室乾燥機が三菱製」などのパターンは結構あるので、浴室乾燥機が動作しないという場合に、どっちの業者を頼るのかというのが重要ポイントとなります。
リンナイに修理依頼をして、原因がリンナイのボイラーにあれば問題ないのですが、リンナイのメンテナンスの人に「これは暖房端末の故障で、リンナイのボイラーに問題ありません」という診断をされた場合、基本的にはリンナイの人に出張点検料を支払い、再度暖房端末のメーカーに修理依頼をするという二度手間が発生します。
ユーザー様自身が調べることが必要不可欠
このような二度手間になったり余計な費用を掛けないためには、ある程度ユーザー様自身で現状を調査していただく必要があります。
出張点検料はメーカーによっても異なりますが、大体3,000円~6,000円くらいの最低経費が設定されていることが多いので、これを無駄にしないためにも「まずはご自身で、どこに原因があるのかを軽く調べてみる」くらいのことはした方がいいです。
どうしても分からなければ、修理依頼先の業者に症状を説明して「おたくに修理依頼をすれば解決しそうですか?」と聞いてみるのもいいでしょう。
大抵は「現場を見てみないとハッキリとは分からない」と一蹴されてしまうと思いますが、上手くいけば万が一間違っても出張料だけにしてくれたりとか、そういう恩恵が受けられるかもしれません。
本記事のまとめ
- 暖房端末が動作しない場合、暖房ボイラーに原因があるのか端末に原因があるのかをハッキリさせよう
- まずは暖房ボイラーのエラーを確認すること
- リモコンが設置されていない場合は、暖房ボイラー本体の燃焼ランプを確認しよう
- 暖房端末が複数ある場合は、全部の端末が同じ症状なのか、1つの端末でおかしい症状が出ているかをチェック
- 暖房ボイラーと暖房端末の製造メーカーが違う場合は要注意
暖房端末が動かない原因は、一口には言い表せないほどの様々な要因が考えられます。
エラーが出ているのであれば、その番号をネット検索してもらってどこに原因があるかを調べてもらえればいいのですが、そうでもなければ原因がどこにあるかを判断するのはユーザー様にとって非常に難しいはずです。
ただ、単純に考えるだけでも「正常に動く箇所と動かない箇所があるのに、熱源の暖房ボイラーが故障しているってあるのかな?」という疑問は出てくるはずですし、その疑問によって二度手間が解消されることも十分にあります。
二度手間がなくなれば修理費用はもちろん、修理が完了するまでの日数も短縮されるので、ご自身で色々な可能性について考えてみてはいかがでしょうか?